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レイ・チェン ヴァイオリン・リサイタル

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(写真はコンサートの案内ちらしより流用)

若手ヴァイオリニストのレイ・チェンのリサイタルのチケットが手に入ったので、トッパンホールに聞きに行った。
1989年生まれの20歳。2008年ユーディ・メニューイン・ヴァイオリン・コンクール優勝、2009年エリザベート王妃国際音楽コンクールで優勝という経歴を持つ。プログラムのプロフィールには、生まれた年だけ書かれていて、どこ生まれの何人か、書かれていなかった。ネットで調べたら台湾系オーストラリア人だそうだ。ヴァイオリンはアメリカのカーティス音楽院で学んだ。

プログラムは

タルティーニ(クライスラー編):ヴァイオリン・ソナタ ト短調「悪魔のトリル」
フランク:ヴァイオリンとピアノのためのソナタ イ長調
バッハ:シャコンヌ
ヴィエニャフスキー(ティボー編):エチュード・カプリース op.18第4番
ヴィエニャフスキー:伝説 op.17
ヴィエニャフスキー:創作主題による変奏曲 op.15

ニューヨーク在住のtamaちゃんがブログに紹介していたレイ・チェン リサイタルと全く同じプログラムのようだ。

レイ・チェンのヴァイオリンは、とても美しく澄んだ音色で、弱音になればなるほど伸びていく美音が素晴らしい。
彼は、2009年、ニューヨークの国際アーティスト・オーディションに優勝して1721年製ストラディヴァリ「マクミラン」の貸与を受けた。さらに日本の音楽財団から1708年製ストラディヴァリウス「ハギンズ」の貸与を受けている。この日のリサイタルでは、どちらのストラドを弾いたのだろう、興味のあるところだ。
レイ・チェンは、タルティーニとフランクという国も時代も全く違う二人の作曲家の曲を、ほとんど同じ音の出し方、奏法で弾いた。
バロックを専門とする演奏家の弾くタルティーニ、フランス人の演奏家の弾くフランク、おそらく彼の演奏は、それとは違うものだろう。その是非はともかく、限りなく美しく爽やかな演奏だった。

ピアノを演奏したのは、作曲を専門とする人だったが、徹底して独奏者を立てる奏法、タルティーニでは一音たりともヴァイオリンより先に音を鳴らさない。さすが音楽について知り尽くしている作曲家の演奏、と思ったが、次のフランクは全く歯がゆい演奏だった。
この曲は2楽章冒頭のピアノのソリスティックな部分でも分かるように、ヴァイオリンとピアノが対等にぶつかり合って作り上げて欲しい曲だ。それなのに、ピアノのふたを全開にしながらソフトペダルを踏んでいるのではないかと思うような抑えた音で、ヴァイオリンの後を背後霊のようについていくだけのピアノ。「隔靴掻痒」とはこのことか。

休憩はさんで、後半には短い曲が数曲並んだ。
前半にソナタ2つ、後半にアンコール曲に使われることもあるくらいのコンパクトな曲、アンバランスなプログラムをちょっと不思議に思っていたのだが、演奏を聴いてその理由が分かった。
レイ・チェンはアクロバティックな超絶技巧を持ち味とするヴァイオリニストだったのだ。
息を呑むような速いパッセージを精密機械のように軽々と弾いてのけ、しかもフレーズの終わりの音がよく響くので、フレーズからフレーズへ息切れしながら綱渡り・・・という超絶技巧曲の演奏にありがちな危なっかしさが全然ない。
アンコールは、別のリサイタルでプログラムに組まれていたパガニーニの「カンタービレ」とサラサーテの「序奏とタランテラ」と、これまた超絶技巧の2曲。見事な名人芸を堪能した。

by pataponm | 2010-01-28 16:00 | 音楽  

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