手作り絵本「ゆりかご」
2013年 06月 20日
「第1回彩の国 手づくり絵本展」に出品した作品「ゆりかご」ご紹介。
絵が上手で近所の奥さんたちを相手に絵画教室をやっていたこともあるKさんが絵を描いてくれました。
ある春の日、うさぎのあかちゃんが生まれました。おかあさんは、じょうぶな草をあんで小さなゆりかごをつくりました。
ゆりかごには、木の実でつくったすずがひとつついていました。
あかちゃんは、あたたかい日ざしをあびてねむり、目がさめると木の実がトララトララとなるのをきいてわらいました。
うさぎのあかちゃんはすくすくと大きくなって、ゆりかごから出たり入ったり、手で木の実をたたいてトムトムタムと音をたてたりできるようになりました。そのうち、ゆりかごに入れないくらい大きくなって、のはらを一日中走りまわるようになりました。
やがておかあさんは、子うさぎをつれてひっこしていきました。のこされたゆりかごは、のはらでひっそりと風にふかれていました。
そこへ、たぬきの子がとおりかかり、ゆりかごをみつけました。
「すてきなかごねぇ! お花をいっぱいつんで、おばあちゃんにとどけてあけようっと」
たぬきの子は、きんぽうげやすみれやたんぽぽを、ゆりかごからあふれるまでたくさんつみました。そのとき、きゅうにつよいかぜがふいてきて、かごは空たかくまい上がりました。花は、くるくるまわりながら空にちらばりました。
「きれい! お花がかぜにのってる!」
たぬきの子は、むちゅうで花のあとをおいかけていきました。
ゆりかごは、じめんにおちてころがり、かしの木のねもとで、下むきになってとまりました。それから長いあいだ、なにごともおこりませんでした。そのままかごは、かぜのこえに耳をすましてでもいるように、じっとしていました。
つぎの春、のねずみがゆりかごをみつけました。
「おっ、ちょっといいいえだぞ」
のねずみは、けっこんしたばかりのおくさんをよんでくると、ゆりかごを見せました。
「げんかんはここがいいよ。すてきな木のすずがぶら下がっている」
おくさんは、すずをコロンカランとならしてみて、そのいえがとても気にいりました。そして、あんしんして子どもをたくさん生みました。
まもなく、せまいいえの中は、春生まれの子どもたち、夏生まれの子どもたち、秋に生まれたあかちゃんたちで、すぐいっぱいになってしまいました。
「これじゃ冬がこせないな。ひろくてあたたかないえをさがしにいこう」
と、のねずみはいって、たくさんのかぞくをつれて、ゆりかごのいえを出ていきました。
ゆりかごは、ながい冬のあいだ、ゆきにうもれてじっとしていました。春がきてゆきがとけると、ゆりかごもすがたをあらわし、気もちのいいかぜにふかれて木の実がコロコロとなりました。
きつねのぼうやが、その音を聞きつけて、ちかづいてきました。
「なんだろう、これは」
きつねは、ゆりかごをあたまにかぶってみました。
「ぼうしかな」
きつねが走ると、木の実がたのしそうにカラコロとなりました。
そのとき、足もとから小鳥がばさばさっととびたったので、きつねはおどろいてひっくりかえりました。それからきつねは、あたまからかごがおっこちたのにも気がつかず、小鳥をつかまえようと、走っていってしまいました。
ゆりかごは、木のえだにひっかかってぶらさがっていました。いたちのきょうだいがやってきて、それをかわるがわるブランコにしてあそびました。
「もっともっと、つよくこいでごらん。カッコンタランといい音がするよ」
ふたりは、このブランコがとても気にいって、夏のあいだまいにちあそんだので、とうとうとってがぶつりときれてしまいました。
いたちのおかあさんが、秋になってからそのかごにりんごをたくさん入れていちばへもっていきました。
いちばには、りすがあつめたくるみや、にわとりがつくったはねかざりや、小鳥がつんできた木いちごなどが、うられていました。そこへ、おなかの大きなうさぎのおくさんがとおりかかり、りんごのかごに目をとめると、それをふしぎそうにじっとみつめました。
「りんごはいかが?」
いたちのおかあさんがいいました。
「ごめんなさい。わたし、りんごじゃなくて、そのかごを見ていたんです」
うさぎのおくさんがこたえました。
「これを見てると、むねの中にとってもあたたかい、なつかしいものがひろがっていくの。この中で、気もちよくねむってしまいたくなるような・・・」
「このかごは、子どもたちがみつけて、ブランコにしてあそんでたものなんですよ」
そのとき、かぜがふいてきて、ゆりかごの木の実がトララトララとなりました。
「あ! この音、おかあさんがつくった木の実のすずとおなじ音だわ。いたちさん、このかごは、ははがわたしのためにつくってくれたゆりかごなんです!」
「まあ!そうだったんですか。じゃあ、りんごがぜんぶうれたらかごはあなたにさしあげましょう」
と、いたちのおかあさんがいいました。
うさぎのおくさんはかごをもらってかえると、ちぎれたとってをリボンでむすんでまどの下にたいせつにおきました。かごからりんごのかおりがかすかにしました。
おくさんは、大きなおなかをなでながら、もうすぐ生まれてくるあかちゃんに、そっとはなしかけました。
「あなたのおばあちゃんが作ってくれたゆりかご、しあわせをいっぱいのせてかえってきたのよ」
さわやかなかぜがふいてきて、まどべにつるした木の実のすずが、、タラントンタラントンと、よびあうようになりました。
絵が上手で近所の奥さんたちを相手に絵画教室をやっていたこともあるKさんが絵を描いてくれました。
ある春の日、うさぎのあかちゃんが生まれました。おかあさんは、じょうぶな草をあんで小さなゆりかごをつくりました。
ゆりかごには、木の実でつくったすずがひとつついていました。
あかちゃんは、あたたかい日ざしをあびてねむり、目がさめると木の実がトララトララとなるのをきいてわらいました。
うさぎのあかちゃんはすくすくと大きくなって、ゆりかごから出たり入ったり、手で木の実をたたいてトムトムタムと音をたてたりできるようになりました。そのうち、ゆりかごに入れないくらい大きくなって、のはらを一日中走りまわるようになりました。
やがておかあさんは、子うさぎをつれてひっこしていきました。のこされたゆりかごは、のはらでひっそりと風にふかれていました。
そこへ、たぬきの子がとおりかかり、ゆりかごをみつけました。
「すてきなかごねぇ! お花をいっぱいつんで、おばあちゃんにとどけてあけようっと」
たぬきの子は、きんぽうげやすみれやたんぽぽを、ゆりかごからあふれるまでたくさんつみました。そのとき、きゅうにつよいかぜがふいてきて、かごは空たかくまい上がりました。花は、くるくるまわりながら空にちらばりました。
「きれい! お花がかぜにのってる!」
たぬきの子は、むちゅうで花のあとをおいかけていきました。
ゆりかごは、じめんにおちてころがり、かしの木のねもとで、下むきになってとまりました。それから長いあいだ、なにごともおこりませんでした。そのままかごは、かぜのこえに耳をすましてでもいるように、じっとしていました。
つぎの春、のねずみがゆりかごをみつけました。
「おっ、ちょっといいいえだぞ」
のねずみは、けっこんしたばかりのおくさんをよんでくると、ゆりかごを見せました。
「げんかんはここがいいよ。すてきな木のすずがぶら下がっている」
おくさんは、すずをコロンカランとならしてみて、そのいえがとても気にいりました。そして、あんしんして子どもをたくさん生みました。
まもなく、せまいいえの中は、春生まれの子どもたち、夏生まれの子どもたち、秋に生まれたあかちゃんたちで、すぐいっぱいになってしまいました。
「これじゃ冬がこせないな。ひろくてあたたかないえをさがしにいこう」
と、のねずみはいって、たくさんのかぞくをつれて、ゆりかごのいえを出ていきました。
ゆりかごは、ながい冬のあいだ、ゆきにうもれてじっとしていました。春がきてゆきがとけると、ゆりかごもすがたをあらわし、気もちのいいかぜにふかれて木の実がコロコロとなりました。
きつねのぼうやが、その音を聞きつけて、ちかづいてきました。
「なんだろう、これは」
きつねは、ゆりかごをあたまにかぶってみました。
「ぼうしかな」
きつねが走ると、木の実がたのしそうにカラコロとなりました。
そのとき、足もとから小鳥がばさばさっととびたったので、きつねはおどろいてひっくりかえりました。それからきつねは、あたまからかごがおっこちたのにも気がつかず、小鳥をつかまえようと、走っていってしまいました。
ゆりかごは、木のえだにひっかかってぶらさがっていました。いたちのきょうだいがやってきて、それをかわるがわるブランコにしてあそびました。
「もっともっと、つよくこいでごらん。カッコンタランといい音がするよ」
ふたりは、このブランコがとても気にいって、夏のあいだまいにちあそんだので、とうとうとってがぶつりときれてしまいました。
いたちのおかあさんが、秋になってからそのかごにりんごをたくさん入れていちばへもっていきました。
いちばには、りすがあつめたくるみや、にわとりがつくったはねかざりや、小鳥がつんできた木いちごなどが、うられていました。そこへ、おなかの大きなうさぎのおくさんがとおりかかり、りんごのかごに目をとめると、それをふしぎそうにじっとみつめました。
「りんごはいかが?」
いたちのおかあさんがいいました。
「ごめんなさい。わたし、りんごじゃなくて、そのかごを見ていたんです」
うさぎのおくさんがこたえました。
「これを見てると、むねの中にとってもあたたかい、なつかしいものがひろがっていくの。この中で、気もちよくねむってしまいたくなるような・・・」
「このかごは、子どもたちがみつけて、ブランコにしてあそんでたものなんですよ」
そのとき、かぜがふいてきて、ゆりかごの木の実がトララトララとなりました。
「あ! この音、おかあさんがつくった木の実のすずとおなじ音だわ。いたちさん、このかごは、ははがわたしのためにつくってくれたゆりかごなんです!」
「まあ!そうだったんですか。じゃあ、りんごがぜんぶうれたらかごはあなたにさしあげましょう」
と、いたちのおかあさんがいいました。
うさぎのおくさんはかごをもらってかえると、ちぎれたとってをリボンでむすんでまどの下にたいせつにおきました。かごからりんごのかおりがかすかにしました。
おくさんは、大きなおなかをなでながら、もうすぐ生まれてくるあかちゃんに、そっとはなしかけました。
「あなたのおばあちゃんが作ってくれたゆりかご、しあわせをいっぱいのせてかえってきたのよ」
さわやかなかぜがふいてきて、まどべにつるした木の実のすずが、、タラントンタラントンと、よびあうようになりました。
by pataponm | 2013-06-20 18:46 | 創作童話