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カトルストン・パイ

4月2日、ブログのタイトルを「カトルストン・パイ」にしようと思って、十数年ぶりに「クマのプーさん」の本を開いた。頭のわるいクマのプーが、人からまるでなぞのようにわけの分からないことを言われたときに歌うナンセンスソング、「カトルストン・パイ」。
「A fly can't bird, but a bird can fly.」この一節を、訳者の石井桃子は「スズメは、はえないが ハエはすずめる」と訳した。すごいなぁ、と思う。
石井桃子の訳は、言葉通りでない部分も多くあるが、物語全体の機知に富んだ生き生きとした面白さや言葉のリズムを見事に伝えている。登場人物たちの個性も、選び抜かれた話し言葉を使って目の前に浮かび上がって来るように表現している。
私の子供時代は、プーと共にあった。「クマのプーさん」と「プー横丁にたった家」を何度も読み直し、似たようなお話を書き、プーの歌う歌をつぶやき、プーの世界に心を遊ばせた。
どのページからも、当時の私の気持ちが蘇えって来そうな気がして、お茶を飲みながら、ページをめくりつつ、それにしても子供の心を深く理解した石井桃子の翻訳は、やっぱり素晴らしい、と感動していた。
翌日、夕刊の一面に、「石井桃子さん死去」の報があった。101歳、4月2日の午後3時半に逝去したとある。私が石井桃子に思いを馳せながら「カトルストン・パイ」を読んでいた、丁度その時間だ。
それからまた数日後、しばらくぶりに友人のHPを覗くと、めったに更新しない人なのに、その日に書かれた最新のページに石井桃子の写真があった。「プー」は読んだことはないけれど、日本で初めて「クマのプーさん」を読んだ子供として新聞に紹介されていた方が、自分と同じマンションに住んでいるという話題で書いていた。
敬愛する石井桃子さんと「交信した」とまでは言わないが、私の心が何かに引かれて、飛んで行ったのかなぁ、と思った。
カトルストン・パイ_b0134988_1653379.jpg

by pataponm | 2008-04-11 16:01  

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