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つくし摘み

3月最後の土曜日、近所の荒川につくしを摘みに行った。期待したほどの密集地はなく、つくしは急勾配な土手のあちこちにちらほらと頭を出していた。足元を見下ろすより斜に透かして見た方が、ひょいと伸びているつくしが目に入りやすいので、つい上へ上へと土手を登りながら摘むことになってしまう。
つくし摘み_b0134988_1164854.jpg

気付くと土手のてっぺんまで登り切っていて、腰を伸ばしながら見下ろすと荒川の流れと春の芽吹きが始まった緑の河原が見渡せて気持ちがいい。
夫に手伝ってもらったお蔭で、短時間でスーパーの袋にいっぱい摘めた。しかし、つくしはこの後の処理が大変なのだ。
「摘んだ時間の3倍かかる」と母が言っていたハカマ取りをしなければならない。しかも、ハカマがカリッと乾いていて「シャキシャキ」とむける、その日のうちに終わらせなければならないのだ。母は、摘むときから「ひょろっと茎が長くて、ハカマの数が少ないのを取ってね」と言っていた。夜は、つくしの山を前にして、母と向かいあい、物も言わずにハカマ取りをしたものだ。
その晩も、指先を真黒にしてハカマをむいた。
「摘むときはもっともっとと思うけど、ハカマ取るときはあんなに摘まなきゃよかったって思うね」と言っていた母の言葉を思い出しながら・・・。
時期が少し遅かったのだろうか、つくしは伸び切って胞子も飛んだ後で、茎は水気を失いかけていた。ハカマの先が焼けたようにちょっと黒くなっている。
それでも、ハカマを取り終わったつくしを熱湯でさっと煮てざるに取り、みりんと醤油と千切った梅干の果肉で味付けして7~8分煮ると、懐かしい我が家の味になった。
この、つくしの梅干煮は、母の家にずっと伝わって来た味だ。
土手で摘んでいると、毎年必ず何人もの人から「何を摘んでいるんですか?」「どうやって食べるんですか?」と聞かれる。その都度私は、この我が家伝来の味を教えている。
どの料理本にも載っていない「つくしの梅干煮」、荒川近辺から広まって、いつの日か、郷土の味になるのではないかしら?
つくしは英語では「horsetail」というらしい、と夫が言った。西洋にもつくしがあるというのが驚きだが、日本語では「土筆」と書く。東西の連想の違いが面白い。つくし摘み_b0134988_11105061.jpg

土筆の梅干煮。
つくしつくしつくしの文字が煮込まれている。

by pataponm | 2008-04-14 11:27 | 料理  

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