かめという名前の犬

山形に帰省したとき、夫の叔父K(といっても同い年)から面白い話を聞いた。
昔この辺りでは「かめ」という名の犬が多かった。なぜかというと、酒田などが貿易港になっていた時代に住んでいた外国人が、飼い犬を「カメ、カメ(come on, come on)」と呼ぶのを聞いて犬の名前と勘違いしたから、というのだ。
あまりに落語的な話なので「まさかぁ」と大爆笑したら、Kさんは「ほんとだよ。子供のころ裏のOOんちで買ってた犬、かめっていったもんなぁ」と言っていた。

本当の話なら傑作、と思って試しに「かめ 犬の名前」というキーワードで検索してみたら、なんと、同じような話がいくつもヒットしたではないか。

酒田というわけでもなく、神戸だったり場所は特定せず「明治時代に政府に雇われていたアメリカ、イギリス人」だったり。「洋犬はカメ、和犬はポチと名付けられることが多かった」とか「子供のころは周りに結構カメという犬がいた」と書く人も。
中には「子供のときに犬に追いかけられて逃げたら、飼い主が『噛め!』とけしかけてきて噛みつかれた」というのもあったが、これなどももしかしたら犬の名が「かめ」だったのかも知れない。

それらの文の中で初めて知ったのだが、耳で聞き覚えた英語を「車夫英語」、文字で読んだ英語を「書生英語」と言うのだそうだ。犬の名が「かめ」というのは、典型的な「車夫英語」ということだろう。
古い時代に入ってきた英語は、耳で聞いたとおりの発音が多く、新しい時代のは文字をローマ字読みしたようなものが多いということは、私も以前から感じていた。
たとえば昔小麦粉のことを「メリケン粉」といったが、これは「アメリカン」を耳で聞いた言葉だろう。逆に「ジレンマ」は dilemma と綴り、発音は「ディレマ」に近い。文字で読んでローマ字的に「ジレンマ」と読んだと思われる。
1850年代に日本に来たジェームス・カーティス・ヘボンは、ヘボン式ローマ字を考案した人として有名だが、James Curtis Hepburn と綴り、女優のキャサリン・ヘプバーン( Katharine Hepburn) とは親戚関係にあるという。キャサリン・ヘプバーンは1950年代に日本に知られるようになった女優だ。アメリカ人に発音させれば同じ言葉なのに、カタカナ語になるとそれが入って来た時代の言い方が定着してしまうから、現在でも「ヘボン式」は「ヘプバーン式」とはならず、キャサリンはキャサリン・ヘボンとは言われない。おかしな話だ。

アメリカ人に時間を聞きたいときは「掘った芋いじるな(What time is it now?)」と聞けばいい、という話は有名だが、あるテレビ番組で「本当に通じるか」という実験をアメリカでしたらしい。結果は、カタカナ英語で「ホワット タイム イズ イット ナウ」と聞くよりはるかに高い確率で理解されたとか。
他にも、挨拶するときは「早鮎(How are you?)」、水が欲しいときは「藁(Water)」と言えば通じるとか、「車夫英語」を笑いのネタにするような話はいろいろある。

でも、英語は本来アメリカ人に通じるように発音するのが本当だと思うのだ。そういう意味では、昔の日本人の方が耳がよくて感覚も優れていたのではないかという気もしてしまう。
「車夫英語」「書生英語」では、車夫が耳から覚えた英語をおとしめているような気がする。あえて言うなら「耳英語」「文字英語」と呼びたい。

「耳日本語」というか、「耳英語」の逆バージョンもある。
アメリカ人が日本人に向かって話すとき、
Good morning! と言いたかったら 「Ohio!(オハイオ州)」、
Thank you. と言いたかったら「alligator(アリゲーター・ワニ)」と言えばいい、これは昔からよく聞くが、
No problem. と言いたいときは「Monday night」と言えば日本人には「問題ない」と聞こえる・・・、というのもあった。これなどはタモリの「空耳アワー」の世界か。

数日前の新聞の子どものつぶやきコーナーに、とてもかわいらしい「耳英語」が載っていた。
   
  『きょう、おねえちゃとさくらんぼ交差点をわたって来たの』
   スクランブル交差点のことでした。

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◎小学校1年生の国語の教科書に「くじらぐも」というお話が載っている。校庭で先生と子供たちが体操をしていると、くじらぐもがやってきて「お乗りよ」と言い、みんなで雲に乗る・・・という物語。こんな雲だったかな? 乗りやすいように低く降りて来てくれているようだ。
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(2010.12.8)
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by pataponm | 2010-12-13 10:23 | 英語  

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