母の遺したもの かばん

若いころの絵画、彫刻から始まって晩年のテキスタイル製作、人形制作、編み物と、母は実にいろいろなものに手を出して楽しんでいた。
父は母が何か新しいことを始めて没頭していると「いろんなことをやりすぎるよ。好奇心が強すぎて飽きっぽいんだよなぁ。」と言っていた。確かに、絵画一筋貫いて家族を養い、趣味一つ持たずに生きて来た父から見れば、「楽しい、面白そうなもの」だけに飛びついて夢中になる母はそんな風に見えたかもしれない。でも、没頭したものすべて「深入り」のしかたが並大抵ではないので、それはそれで偉業といえるのではないかとも思う。
「父さんは、私のやること全然認めてないの。」と、ときどきぼやきながらも、母はやりたいことはやり通した。それでも多少は父に遠慮していたのか、父が出かける日には「今日は一日中好きなことができる」と思って、父を見送った玄関先で小躍りしたい気分になったと言っていた。

そんな母が次々と熱中したものの中に、かばん作りがあった。いったん始めたものは、材料、道具ともに最高級のものをそろえる母、皮加工専用のミシンを買い、本皮や貴重な布を贅沢に使っていくつものかばんを作った。
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◎パナマ共和国のクナ族が起源と言われる民族手芸「モラ(MOLA)」の布を使ったかばん。モラとは、何色もの布をあらかじめ重ねておき、切り抜いて下の色を出してかがっていくという、「逆アップリケ」ともいわれる手芸だ。このかばんに使われたのは、現地の人が作ったオールドモラといわれる貴重なものだ。

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◎左の二つは、チロリアンテープをあしらったポシェット。母はチロリアンテープにも夢中になって、スイスやオーストリアなどに行くという人がいると頼んで買って来てもらっていた。1メートル数千円もする高価なものばかりだった。右上はスエード。右下は、自分で織った布を使ったもの。

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◎娘が小学生のころ作ってもらったピアノの楽譜を入れるおけいこかばん。ここにも幅広のチロリアンテープが使われている。

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◎叔母(母の妹)は、デンマークのクロスステッチを永年やっていて、多くの作品を作り出している。テーブルクロスとしてもらった刺繍作品を、母はかばんに仕立て直した。
「切っていい?って聞くから、いいわよって言ったけど、構図考えて刺したものなのに、ちょっとがっかりした。」と、後になって叔母は私にだけ話した。

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◎上は、ドイツ製のタオル地を使ったもの。下は、ブータンの人が織った布で、メーター2万円だったか、驚くような値段で買ったものだ。

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◎自作の布で作ったかばん。

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◎布の織り目のアップ。
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by pataponm | 2008-10-31 11:24 | 母の遺したもの  

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